2011年03月28日

The Gate House / Nelson DeMille

874p、読了。

どうもここんとこの冷え込みで風邪を引いたのか、さむけ+微熱。おなかの調子もよろしくない。というわけで昨日引きこもって残りを一気に読んでしまった。

ネルソン・デミルはアメリカのミステリ作家であります。かなり翻訳点数は多いはずだけど。ワシは大昔に「ゴールド・コースト」つうのを読んだことがあります。ニューヨーク郊外のロング・アイランドの高級住宅地、ゴールドコーストに暮らす主人公の隣にマフィアのドンが引っ越してきて・・・というお話だった。

で、この"The Gate House"はその続編にあたるらしい。前編がどんなだったか憶えてないのだけど、この作品はこれで独立してるので別に読むのに支障はない。

the-gate-house.jpg

主人公、John Sutterはやや自意識過剰なインテリ弁護士。10年前に妻が隣人のマフィアのドン(主人公のクライアントでもあった)と浮気し、痴情のもつれ(クラシカルな表現だ)から撃ち殺してしまった。離婚し、3年間の世界航海旅行を経て、ロンドンで法律事務所に勤務している。

旧知の老婆が死の床にある、ってことでしばらくの間休暇を取り、苦い記憶のあるロング・アイランドに戻ってきた。主人公は老婆の顧問弁護士なので、借家権(lifetime tenancyつうらいしい)やら遺産やらを片付けなければならないからだ。老婆は前妻の実家のメイドだった。つまり前妻はとんでもない金持ちの娘。葬儀で顔を会わせることになるだろう。前妻はしばらくカリフォルニアで暮らしていたが、いまはロング・アイランドに舞い戻っていることを主人公は知る。なんといっても地元の有力者の娘なのだ。

あれやこれやと考えているうちに、かつてのドンの息子が訊ねてくる。顧問弁護士になってくれ、というのだ。息子は父の後を継ぎ、マフィアのドンとなっている。主人公は父親の顧問弁護士でもあった。むろん、合法的な企業も営んでいてそちらをやってくれ、と。法外なオファーにすぐにロンドンに舞い戻るはずだった主人公の心は揺れる。また、前妻はいまのドンの父親を殺したのであり、マフィアの掟 Vendetta の対象でもある。自分が顧問弁護士になればその間は前妻の身は安全ではないのか・・・?

ミステリというよりは主人公の皮肉なセリフ回しや、奔放で情熱的な前妻、若く野望に満ちたマフィアのドン、俗物の塊みたいな前妻の両親、リベラルで進歩的な主人公の母親とかが入り乱れる人間群像を描いた小説ってかんじです。

主人公の皮肉に満ちたコメントが面白い。文章は平易でスイスイ読める。テンポの良い会話文が多く、へぇ〜っていうようなイディオムがそこかしこにでてくる。なかなか興味深い作品なのだが、米amazonの評価は芳しくない。長すぎて退屈、つうコメントが多い。

確かに。さほど複雑でもないのに、やたら長い。この半分でもいいような。ワシは文章が面白かったので真ん中くらいまでは「ふんふん」と読んでたが、さすがにだれて後半はかなりいい加減。しかしかなりいい加減に読んでもストーリーが追いかけられるくらい簡単な文章でもあります。

米amazonでの評価は「好きな作家だけどこれはな〜」ってのが多いので、他のを機会があれば読んでみたいな。それくらい魅力的な文章でした。

"Capisce?" ってセリフがでてくる。ラテン語っぽいけど、そのとおりイタリア語であります。

Capisce (pronounced cah-PEESH) is an Italian word that is used in American slang to say "got it" or "understand." The correct word in Italian would be capisci (pronounced cah-PEE-shee) to address the second person informally, a.k.a. you. Capisce, in Italian, is used only to address the second person formally (like when speaking to an elder or someone you don't know) or to express that a third person (he, she, it) understands. The correct Italian pronunciation of capisce is cah-PEE-shay.

To say I understand is capisco (cah-PEE-sko).
You better get outta my house before I break your face, capisce? Yeah, capisco.

マフィアの言葉なのでちょっと脅迫じみた使い方をするみたいですね。Capisce?

3月はこれだけだった。これでことし6冊目。月2冊やの。なんとかこのペースは保ちたい。
次はTim O'Brienの"In the Lake of the Woods"をいってみよう。
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2011年02月19日

Clapton / Eric Clapton

328p、読了。

clapton.jpg

つい先日、キムジョンイルの息子がシンガポールのクラプトンのコンサートに現れた、つうニュースがありましたね。なんでも北朝鮮はクラプトンのコンサートをピョンヤンで開催する予定であったけど、直前になってクラプトン本人が嫌気がさしたんだとか。ソースはここここ。明日はソウルで公演か。日本では今回はなしみたいだけど、プライベートで寄ったりするんかな。とんかつ食べにとか。

この自叙伝は、生い立ち(私生児で、祖父母に育てられたのは有名な話)からギターに興味を持ち始めた少年時代、プロになってからの現在までの遍歴を語っている。祖父の家業は左官で、美術学校を落第したクラプトン自身もしばらく左官見習いをやってたんだとか。

ワシが洋楽を聴き始めた70年代前半、エリック・クラプトンは「ロック三大ギタリスト」としてすでに神格化された存在だった。そのときはヘロイン中毒で半引退状態だったけど、しばらくして"461 Ocean Boulevard"で復活。けっこう話題だったのを憶えている。"I Shot the Sheriff"が大ヒットしたけど、ワシは最初に聴いたときはなんだコリャ?だったな。

前半は音楽への傾倒や様々なビッグ・ネームへの出会いというのが多く、なかなか面白かった。ある日(1965くらい?)ロンドンの地下鉄で迷ったアメリカ人の年配の婦人に方角をきかれ、話がクラプトン本人が何をしてるのか、どこへ行こうとしてるのかという話題になり「これからコンサートでビートルズといっしょにギターを弾くんですよ」と答えたところ、おばちゃんビックリ(そら驚くわな)。「一緒に来る?」ってことでおばちゃんを楽屋に連れて行った。

ビートルたちは礼儀正しくおばちゃんに接したが、ひとりジョン・レノンだけは退屈そうな顔を装い、あまつさえコートの下でマスターベーションするような動作をしたんだとか。ジョン・レノンだったらやりかねんな。プラスティック・オノバンドのトロントのコンサートでもレノンはさっさと別のホテルに引き上げてしまい、空港で取り残されたクラプトンたちは「もうちっと俺たちマシな扱い受けてもいいよな〜」とぼやいていたんだとか。

あと三大ギタリストのジェフ・ベックとジミー・ペイジについては、「自分はブルースから、彼らはロカビリーから。競合するところがないから、これでいいのだ」みたいなことが書いてあってなかなか興味深かった。両者の違いがいまいち分からんが、ギタリストのライバルとしてはあまり意識してなかったみたい。

クラプトンといえば「レイラ」だけど、デレクアンドドミノス結成については詳しく書いてある。しかし、レイラでかっこいいスライド弾いてるデュアン・オールマンについては、たまたまレコーディング・スタジオの近くに巡業に来ていたのでゲストギタリストで来てもらった、くらい。その直後の死については触れてすらいない。レイラがあれほどの名曲になったのはデュアン・オールマンのプレイに多くを負っているのだから、もうちょっと書いてやれよ、と思ったしだい。あんまり昔のことなんで忘れたんかもしれんな。

いまなんじ〜そうね、だいたいね〜


まんなかへんは、ヘロイン中毒を克服し雄雄しくカムバック!といいたいところだけど、今度はアルコール依存症に。マージャンでいえば、九連宝灯に引き続き国士無双テンパったみたいなもんだ。ヘロイン中毒からの脱却はさほど触れていないけど、アルコール依存症のはかなり詳しく書いてある。非常に苦労したみたいだけど、もう20年飲んでないそうだ。とんかつにビールって旨いのになあ。やはり適切に飲んでこそのアルコールであります。

それと女性関係ね。ジョージ・ハリスンからパティ・ボイドを奪ったのは有名な話だけど、パティには相当いかれたたみたいで、アル中地獄ともあいまってなんだかグチャグチャ。依存症で施設に入院した後も、クラプトンはドライでいるのにパティは夕食でワインを嗜み、食後はコカイン決めるつう生活ではそらうまくいかんわな。パティの自伝ではDVをばらされてたけどな。悪いことはできんもんやの。

若き日のパティ。(ジョージ・ハリスンの相方。)可愛いなあ、やっぱり。


パティに哀願する一方、次から次へと浮気していていてなんともうらやましい、もといケシカラン奴である。イヴォンヌ・エリマンとの間にも子供つくってたんだな。

イタリア人女性との間にできた男の子がアパートから転落死した悲劇が「ティアーズ・イン・ヘヴン」に結実したのは有名な話だけど、ここはさすがに痛ましい。父親であるということに自信を持てなかったクラプトンが、サーカスに子供を連れていって、すごく喜ぶ姿を見てなにかしら感じ始めた矢先の出来事だったのでしんみりしました。



英語は平易だけど、句動詞とかが多くてある意味手ごわい。すごくシンプルでへえ、こんな表現でええんや、とすごく勉強になりました。英会話の勉強で、音読したら効果あるだろうな〜。ワシはせんやろけど。オールド・ロックファンで英語に興味があるならぜひとも原書でオススメしたい本です。(翻訳は評判悪いみたい。)

ミュージシャンの自伝では Miles Davis, Patti Smithに続く3冊目。(そういやマリアンヌ・フェイスフルの自伝も半分読んだな。)前2つほどのインパクトはないけど、読んでよかったなあと思う本でした。
posted by デンスケ at 15:58| Comment(6) | PB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月07日

The Coldest Winter / David Halberstam(その1)

657p、読了。ひー。シンドかった。朝鮮戦争(1950.6.25〜1953.7.27)を描いたノンフィクションだけど、本の内容は戦争直前からマッカーサー解任(1951.4.11)までのほぼ1年間にほとんどがさかれている。3ヶ月かかりましたがな。なんせ大作なので登場人物も多く、歴史背景とかも複雑極まる。

David-Halberstam-The-Coldest-Winter.jpg

おおむね
@朝鮮戦争が勃発する前夜の国際情勢、アメリカ国内の政治状況、マッカーサーとトルーマンの来歴と軋轢、GHQ(Dai-Ichi-Buildingと表記されている)でのマッカーサーの日常
A戦闘の勃発からめまぐるしく変化する戦況
Bマッカーサーの解任とその後
の3部構成。個々の戦闘の詳細な描写はちとツライもんがあったな。正直そこまでのディテイルはいらん。




朝鮮戦争は
1.金日成は南進の許可をいくたびもスターリンに求めていた。いったん「解放軍」が進入すると韓国内の共産主義シンパが立ち上がりあっという間に韓国は「解放」されると。冷徹なスターリンはそのような夢物語は信じてはいなかったが、しまいに毛沢東が同意すれば構わないと回答する。

2.毛沢東もそのような夢物語は信じていなかったが南進に同意。この時点ではスターリンと毛沢東もアメリカが介入してくるとは計算していなかった。またアメリカも北朝鮮が南進するとは考えていなかった。

3.金日成が南進を開始(1950.6.25)、軍事力に優る北朝鮮軍はあっという間にソウルを陥落させる。7月7日、国連決議により国連軍結成。なんでVetoPowerを持つソビエトが反対しなかった(棄権)のかは謎だとされるが、どうもスターリンはこの時点ですでにボケ始めていたらしい。しかし主体となる米軍はWWU後に兵力を大幅に削減していた。むろん財政上の要請もあるが、なんといっても戦後核兵器を独占してきた(ソ連は1949に実験に成功したばかり)という事情がある。

4.準備・兵力不足の国連軍は連敗し、ついに半島南端のプサンまで追い詰められるがここでなんとか踏みとどまる。一方マッカーサーは伸びきった北朝鮮軍の補給線を断つべく、ソウルのすぐそばの仁川上陸作戦を決行(1950.9.15)。軍事的に極めて難しい作戦であったがこの大博打は成功、戦況は一変する。北朝鮮軍は壊滅、国連軍は38度線を突破し中朝国境の鴨緑江近くまで進軍。

5.金日成から援軍の打診を受けた中国は建国(1949)すぐでほとんどの重鎮が反対するなか、毛沢東が義勇軍(という実質は中国軍)の投入(1950.10)を決断。さきの北朝鮮軍と同じく補給線の延びきった国連軍はあっという間に38度線より南に追いやられる。しかしここから戦況は膠着。



The Coldest Winterという題名が示すとおり、ここからアメリカと中国の血みどろの戦闘が始まるのだけど、この本はほとんどが中国とアメリカの初期の軍事対決を描いている。

なんで初期の戦況がめまぐるしく入れ替わったのかというと、ひとえに極東最高司令官のマッカーサーの肥大したエゴによる状況把握への鈍感さが最大の原因であると。(まあそれだけではないと思うけど。)なんせ戦争勃発前も後もマッカーサーは朝鮮半島に滞在せず、すべて日帰りで東京から指揮していた。

そんでまた前線の指揮官もマッカーサーの劣化コピーともいうべき、ネッド・アーモンド参謀長(マッカーサーの子分)という人物。もともと少ない兵力を分散させるという戦術上のタブーを繰り返し、人海戦術の中国軍にやられっぱなし。ウォーカー将軍が事故死した後に後任となったマット・リッジウェイが戦術を立て直し、その後戦況は持ち直した。

なんでまた戦術上のタブーを犯したかというと、アーモンドの抜きがたい人種偏見があったのだと。つまり、劣等人種であるアジア人なぞ少数のアメリカ兵で十分であり、碌に中国軍の戦術も研究しなかった。リッジウエイ(マッカーサー解任後の連合軍最高司令官)はその点を改めたのだけれど、ただちにアーモンドの首を切るわけにはいかなかった。マッカーサーが後ろに控えていること、またある程度名を得た人物をただちに追い落とすというわけにはいかないという事情があったらしい。

ここを読んで、ああ、組織ってどこもいっしょだなあ、と。キ××イみたいな上司はいるもんである。その下にいる人間は気の毒としかいいようがない。しかし上司がただちに免職されるわけでなく、そのまま、あるいは(まれだけど)閑職に追いやられるのを待つだけ。その間、兵士は次々に戦死してゆくのである。なんつうか、身につまされました。ワシは別に出世してるわけでないから、そんな直接に圧力を受けるようなポジションでもないけどね。

なんつーか、「上司とはどうあるべきか」つうのをノウハウ本でお手軽に学んだのか、もともと威厳ないのに勿体つけるから、ただのうるさいオッサン(あるいはオバハン)になってるようなのいますね(笑)。うるさい人でも自分を厳しく律してるひとには、ちゃんと部下はついていくもんである。

ぶつぶつ。となんだか卑近な感想になっちゃったなあ。もっと高級な(?)感想はまた今度。
大作で、文章は難しいわ(珍しく辞書を引きまくった)、字は小さいわ、読んでも読んでも終わりがないかんじであったけど、やはり征服感があるなあ。TOEICでいうと、Rが10点は上ったかんじ。

近代アメリカ史に興味のあるひとなら面白いと思う。しかし、邦訳(文藝春秋)は原作にない写真を多数挿入していたりしていてなかなかよいらしいですね。図書館で読んでみるかね。
posted by デンスケ at 07:22| Comment(2) | PB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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