2010年12月11日

国際地球観測年

本棚をごそごそしていたら、小鷹信光著「アメリカ語を愛した男たち」というのがでてきた。ハードボイルドを中心として、翻訳のあれこれについて語っている。ハードカバーで奥付を見たら1985だったから、80年代後半に翻訳ミステリに凝ってた時分に買ったものかと。いままで3回ほど本の大粛清を行ってるのだけど、しぶとく本棚の奥で生き続けていたらしい。

こういう意味でこう訳すとか、これには悩んだとか書いてある。なかでも著者がこだわってるのがtoughという単語だった。まあハードボイルドが題材だもんね。かの有名な「タフでなくては生きていけない」は、もとネタになったと思われる原文では

"How can such a hard man be so gentle?"
"If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle,I wouldn't deserve to be alive." ("Play Back/Raymond Chandler")

どっこにも「タフ」なんて出てこない。もしワシが訳すとしたら
「厳しいひとがよくそんなに優しくなれるのね?」
「厳しくしなきゃ、生きてないよ。優しくなれかったら、生きてる値打ちがないさ」
名訳だ。誰もホメないだろうから、自分でホメる。人生50年余の知恵だ。

hardでありかつgentleというニュアンスでtoughになったのかな?"tough luck"は「ついてない」くらいだし、"tough cop"はこの本によると「(ワルにとってやりにくい)真っ正直な警官」らしい。まあ前後の文章にもよるんだろうけど。「キッツイ」くらいがぴったりくるような。「どっちを選ぶ?」で、「きっついな〜」は"It's tough to say"とワシならいうな。

さてtoughという単語で思い浮かべた曲がこれ↓


"I.G.Y"/Donald Fagen
Standing tough under stars and stripes
We can tell
This dreams in sight
You've got to admit it
At this point in time that its clear
The future looks bright
On that train all graphite and glitter
Undersea by rail
Ninety minutes from New York to Paris
Well by seventy-six well be a.o.k.

What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free

星条旗の下に直立し もういえるさ
この夢は間近 それは認めなきゃ
いまの時点でも明らか
未来は輝いて見える
海底を走るオール・グラファイトのぴかぴかの列車に乗れば
ニューヨークからパリまで90分 76年にはすべてがうまくいっている
世界はなんてうつくしくなるのか
自由な輝けるとき (訳:ワシ)

80年代初めを代表する名曲だけど、"I.G.Y"ってなんじゃらほい?って調べてみたら「国際地球観測年」だった。"International Geophysical Year"の略で、1957〜1958だったとか。ワシが生まれたのはちょうどこの間だな。いろいろな関連事業が行われたけど、南極観測がなかでも有名らしい。んでもって、「昭和基地」の建設とかもその一環。タロとジロのエピソードですな。「紅白歌合戦」で「南極から白組を応援してます〜」のために作られたのではないらしい。

この曲に歌われている「未来の科学社会」ってのはワシが子供の頃の「サンデー」「マガジン」とかの「巻頭カラー(といってもショボイ3色刷り)とくしゅう」でよく取り上げられてた。いまはそういうの見ないな。こういうのが案外、理系離れを生んでるのかもしれないとワシは愚考する。デキの悪いワシですら、エンジニアになることを夢見たものだった・・・。(ワシはいま、Accessのデータベースを構築するので四苦八苦している。なんで50歳過ぎてこんなことやらにゃならんのかと思うが、誰もやってくれないし。)

で、タロとジロであるがコケを食べたりして生き延びたのだけど(ペンギンも捕食してたらしい)、冷凍怪獣ぺギラに襲われなかったのはコケに含まれる成分、ペギミンHのおかげであったことはみなさんご存知のとおり。東京を襲ったぺギラはペギミンHで撃退されたのだった。めでたしめでたし。

ぺギラ
ぺギら.jpg
チャンドラー
チャンドラー.jpg

しかしぺギラが「チャンドラー」という弱っちい怪獣になったのは悲しかったな。いまだにレイモンド・チャンドラーと聞くとレッドキングに翼を引き裂かれ逃亡した怪獣をなんとなく思い出すのである。というわけで話がハードボイルドに戻りましたとさ。ぱちぱち。
posted by デンスケ at 07:51| Comment(8) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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